「人類はすでに月に行ったのに、なぜ長い間“再訪”しなかったの?」——そんな素朴な疑問を持つ人は多いはずです。アメリカはアポロ計画以降、実に54年間も有人で月に行っていませんでした。ところが近年、再び月を目指すアルテミス計画が本格始動。その背景には、科学だけではない“現代ならではの理由”がありました。
なぜアメリカは54年間も月に行かなかったのか?
1969年のアポロ11号で人類初の月面着陸を成し遂げたアメリカは、1972年のアポロ17号を最後に月から遠ざかりました。理由はシンプルで、「目的を達成した」からです。
アポロ計画は、冷戦下での米ソ覇権争いという強烈な政治的目的を背負った国家プロジェクトでした。莫大な予算(現在価値で約2,800億ドル)を投じ、「月に行ける技術力」を世界に示した時点で、国民の関心は急速に低下します。
その後は、
- ベトナム戦争など国内外の課題
- 米ソ関係の緊張緩和
- 宇宙予算の削減
といった事情が重なり、NASAは月よりも地球低軌道(スペースシャトルやISS)へと軸足を移しました。結果として、アポロ18〜20号は中止され、「月に行かない時代」が長く続くことになります。
月探査が“時代遅れ”になっていた時代
2000年代に入っても、月は優先事項ではありませんでした。
オバマ政権下では、月再訪を目指した「コンステレーション計画」も中止。NASAは「火星を見据えた技術研究」やISS運用を重視し、月は中継地点ですらない存在になっていたのです。
つまり、技術的に「行けなかった」のではなく、政治的・経済的に“行く意味が薄かった”というのが実情でした。
転機は2017年、中国の存在
流れが大きく変わったのは2017年。トランプ政権が宇宙政策指令1に署名し、アルテミス計画が再始動します。
その最大の背景は、中国の急速な宇宙開発です。
中国は有人宇宙船、独自の宇宙ステーション「天宮」を実現し、2030年には有人月面探査を掲げています。アメリカにとって月は再び、宇宙覇権を左右する最前線になったのです。
ここで登場するのが、NASA主導のアルテミス計画。これは単なる「月に行く計画」ではありません。
アルテミス計画の“本当の狙い”
アルテミス計画の目的は、大きく3つあります。
1つ目は、持続可能な月面活動。
短期滞在だったアポロと違い、月面基地建設や資源利用を見据えています。
2つ目は、宇宙経済の拡大。
NASAはすべてを自前で開発せず、民間企業に機材開発を委託。サービスを“購入する側”に回る新しい公共事業モデルを採用しています。
3つ目が、中国への牽制。
月面での主導権は、将来の宇宙ルール作りにも直結します。
この流れの中で、SpaceXなどの民間企業が重要な役割を担うようになりました。
それでも進まない理由と政治の壁
理想的に見えるアルテミス計画ですが、現実は順風満帆ではありません。
中核ロケット「SLS」や宇宙船「オリオン」は、従来型のコストプラス契約で開発され、費用は当初の2倍以上に膨張。2026年には600億ドル超とも言われています。
一方で、議会は雇用や産業保護の観点から、ボーイングなど既存企業を守る判断を下してきました。
その結果、民間活用と旧来型公共事業の“ねじれ”が生じ、計画遅延が続いています。
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それでも「今が踏ん張りどころ」
それでもアメリカが月を目指す理由は明確です。
月は、
- 技術力
- 経済圏
- 国際ルール
すべてが交差する場所。
ここで主導権を失えば、宇宙時代の“次の50年”で不利になる——そうした危機感が、アルテミス計画を支えています。
まとめ:
アメリカが54年間月に行かなかったのは、行けなかったからではなく「行く理由がなかった」から。しかし今、宇宙をめぐる国際競争の中で、月は再び戦略拠点となりました。アルテミス計画は、人類の夢であると同時に、現代のリアルな国家戦略でもあるのです。